【3分でわかる】CWPPとは?CSPMとの違いから次世代の選び方まで徹底解説
CWPP(Cloud Workload Protection Platform)とは何か?
CWPP(Cloud Workload Protection Platform)とは、クラウド環境で動作しているサーバーやコンテナなどの”中身”を守るためのセキュリティツールです。簡単に言えば、クラウド上のワークロードを悪意ある攻撃から保護するための包括的なプラットフォームです。Gartnerによれば、「物理サーバーから仮想マシン、コンテナ、サーバーレスまで、あらゆる形態のワークロードを一元的に守るための仕組み」とされています。
(ワークロード‥ 処理や作業の単位。クラウド上で動いているプログラムやアプリケーション、それらが動くサーバー環境全体を指します。)
では、具体的に何を守るのでしょうか?CWPPが守る主なワークロードには次のようなものがあります。
仮想マシン(VM):AWS EC2やAzure Virtual Machinesなど、クラウド上の仮想サーバーです。従来のサーバーに近い形で、多くの企業が基幹システムをこうした環境へ移行しています。
コンテナ:仮想サーバーよりもっと手軽で高速に動く小さなプログラム実行環境です。最近のマイクロサービス化の流れで急速に広まっています。起動が速く効率的な一方で、短い寿命と動的な特性がセキュリティ管理を難しくしています。
サーバーレス関数:AWS LambdaやAzure Functionsのような、必要な時だけ動く関数です。インフラ管理が不要なメリットがある反面、中身が見えづらく、従来のセキュリティ対策では監視しきれません。
これらはそれぞれ特徴が異なり、直面する脅威も違います。CWPPはこの多様なワークロードを統一的な方法で守ることを目指しているのです。
なぜ今、CWPPが必要なのか?2つの背景
1. ワークロードが多様化し、短命になっている
クラウドネイティブ技術が広く使われるようになり、ワークロードの性質が大きく変わりました。特にコンテナやサーバーレス環境では、ワークロードは数秒〜数分という非常に短い時間で作られては消える「短命」な特徴を持っています。
たとえば、ECサイトの大規模セール時には、アクセス増加に合わせて自動的にコンテナが増え、ピークが過ぎると瞬時に減ります。こういった環境では、従来型のセキュリティツールは、エージェントのインストールが終わる前にワークロードが消えてしまうという問題に直面します。また、コンテナイメージの開発から本番環境への展開までが高速化しており、セキュリティチェックを十分に行う時間が確保できなくなっています。
2. クラウド利用企業が負う責任の範囲
AWS、Azure、GCPなどのクラウドプロバイダーは「責任共有モデル」という考え方を採用しています。これは、物理インフラやハイパーバイザーの安全性はクラウド事業者が担保する一方、その上で動くOS、ミドルウェア、アプリケーション、データの保護はユーザー側の責任だというものです。
しかし、多くの企業はこの境界線をきちんと理解していません。「クラウドだから安全」と思い込み、ワークロードレベルのセキュリティ対策を怠っているケースが少なくありません。実際、Gartnerによると、2025年までに起こるクラウドセキュリティ事故の99%は、利用者側の設定ミスや管理不備が原因になると予測されています。この盲点を埋めるのが、CWPPの重要な役割なのです。
CWPPの主要機能と導入メリット
主要機能
CWPPは、ワークロードを多層的に保護するため、以下の機能を提供します。
脆弱性管理:OSやミドルウェア、アプリケーションフレームワークに存在する既知の脆弱性を継続的にスキャンし、CVE(Common Vulnerabilities and Exposures)データベースと照合。リスクレベルに応じた優先順位付けを行い、パッチ適用の計画を支援します。
マルウェア対策:シグネチャベースの検知に加え、機械学習を活用した振る舞い検知により、未知のマルウェアやファイルレス攻撃も検出。不正なプログラムの実行を未然にブロックします。
ランタイム保護(不正侵入検知・防御):稼働中のワークロードの挙動をリアルタイムで監視。異常なプロセスの起動、不審なネットワーク通信、ファイルシステムの改ざんなどを即座に検知し、自動的に隔離・遮断を実行します。
コンプライアンス準拠:PCI DSS、HIPAA、ISO27001、SOC2など、業界標準のセキュリティ基準への準拠状況を継続的にチェック。監査レポートの自動生成により、コンプライアンス対応の工数を大幅に削減します。
コンテナ/サーバーレスセキュリティ:Dockerイメージの脆弱性スキャン、Kubernetes上での異常な権限昇格の検知、Lambda関数の過剰な権限の特定など、クラウドネイティブ技術特有のセキュリティ課題に対応します。
【徹底比較】CSPM、CIEMとの違いは?クラウドセキュリティの全体像
クラウドセキュリティの世界では、CWPP以外にもCSPM、CIEMといった重要なソリューションが存在します。これらは互いに補完関係にありながら、それぞれ異なる領域をカバーしています。以下の比較表で、各ソリューションの役割を明確に整理しましょう。
| 観点 | CWPP (ワークロード保護) | CSPM (設定ミス対策) | CIEM (権限管理) |
|---|---|---|---|
| 保護対象 | ワークロード内部(OS、アプリケーション、ランタイム) | クラウドインフラの設定(ネットワーク、ストレージ、IAM) | クラウドリソースへのアクセス権限とアイデンティティ |
| 主な目的 | マルウェア対策、脆弱性攻撃からの保護、ランタイム異常検知 | 設定ミスの発見と修正、セキュリティポリシー違反の検出 | 過剰な権限の最小化、未使用権限の削除 |
| 検知例 | サーバー内での不正なプロセス起動、異常な通信パターン | S3バケットの意図しない公開設定、開放されたポート | 90日以上使われていない管理者権限、過剰なIAMロール |
| 対応タイミング | ランタイム(稼働中) | デプロイ前後の設定チェック | 権限付与時と定期的なレビュー |
これらの個別ソリューションを統合した概念として、CNAPP(Cloud Native Application Protection Platform)が注目を集めています。CNAPPは、CWPP、CSPM、CIEMの機能を単一のプラットフォームで提供し、クラウドセキュリティの包括的な可視化と管理を実現します。Gartnerは、2025年までに新規のクラウドセキュリティ導入の60%がCNAPPアプローチを採用すると予測しています。
CWPPの限界と次世代アプローチ
CWPPは優れたセキュリティツールですが、単体では対応しきれない課題があります。クラウド環境を本当に守るには、複合的な対策が必要なのです。
課題1:クラウド設定の不備
どんなに高性能なCWPPを導入していても、クラウドの設定自体に問題があれば意味がありません。例えば、管理用SSHポートが公開されていれば、攻撃者に侵入口を与えてしまいます。CWPPは侵入後の不審な活動は検知できますが、入口を塞ぐことはできないのです。
この問題を解決するのがCSPMです。CSPMはクラウド設定を常に監視し、業界標準に照らして不適切な設定を自動検出・修正します。CWPPとCSPMは互いに補完し合い、多層的な防御を構築します。
課題2:アプリケーションの脆弱性
CWPPはOSやミドルウェアの脆弱性には対応できますが、自社開発コードやオープンソースライブラリの脆弱性までは把握できません。最近の調査によると、ビジネスアプリケーションの9割以上がオープンソースを使用しており、その多くに脆弱性が潜んでいます。
この課題に対しては、SBOMでコンポーネントの依存関係を可視化し、DASTで実際のアプリケーション動作環境を検査することが効果的です。前者は構成要素を明確にし、後者は実環境での脆弱性を発見します。
課題3:管理外のIT資産
「シャドーIT」と呼ばれる管理外の資産が攻撃の入口になるケースが増えています。開発者が一時的に立ち上げたサーバーや、退職者が残したクラウドリソースなど、把握していない資産には当然ながらセキュリティ対策も行き届いていません。
ASM(Attack Surface Management)は外部から自社の公開資産を探索し、潜在的なリスクを発見します。定期的なスキャンで新たに公開された資産や、証明書切れ、古いソフトウェアなどの問題を早期に特定できるのです。
結論:CWPPの重要性と統合アプローチの必要性
これまで説明してきたように、CWPPはクラウドワークロードを保護する上で欠かせないソリューションです。マルウェア対策、脆弱性管理、ランタイム保護などの機能によって、ワークロード内部の脅威からシステムを守ることができます。
ただし、クラウドセキュリティには様々な課題があります。インフラの設定ミス(CSPM)、過剰な権限付与(CIEM)、管理外の公開資産(ASM)、ソフトウェアサプライチェーンのリスク(SBOM)、アプリケーションの脆弱性(DAST)など、多角的な対応が求められます。これらすべてに別々のツールで対応しようとすると、運用が複雑になり、コストも増大します。さらに、ツール間でアラートを関連付けることができないため、重要な脅威を見逃してしまう恐れもあります。
今後のクラウドセキュリティでは、これらの機能を一元的に管理・保護するCNAPP(Cloud Native Application Protection Platform)が標準になるでしょう。単一の画面ですべてのセキュリティ状況を確認し、リスクの優先度判断から対策実施まで一貫して行える環境こそが、日々複雑化するクラウド環境に最も適したアプローチといえるのではないでしょうか。
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